いよいよ開幕したセリエA
先週末、いよいよ開幕した09−10シーズンのセリエA。3カ月間、このときを待った甲斐があったと思うほど開幕から盛り上がりを見せた。両チーム合わせて5ゴールが生まれたシーソーゲーム、意外な結果、名門2チームの復活、レフェリーの不可解な判定、試合後に爆発したあの会長(といってもみなさんが想像しているのとは別の人物だ)。とにかくいろいろあった。
まず取り上げなければいけないのが、王者インテル。ホームで昇格組のバーリとまさかの引き分けに終わった。バーリは昨シーズンのチームを支えた2人、バレット(ケガ)とグベルティ(ローマへ移籍)を欠きながら、プレー内容に見合うポイントをゲット。実際、最後の最後でリバスがシュートをふかさなければ、勝っていてもおかしくなかった。
逆にインテルはイブラヒモビッチが抜けた以外は過去数シーズンとほとんど変わらないメンバーだったが、ジャッジに恵まれての引き分け。挙げたゴールはミリートが得た微妙なPKをエトーが沈めたもので、前半のマテラッツィのアルバレスへの両足タックルはイエローカードで済んでラッキーだった。もちろん、エトーには2ゴール目を奪うチャンスも。しかし、バーリのクトゥゾフにゴールを許し、相手の攻撃にも相当苦しんだ。その証拠にモウリーニョ監督は試合中に3度もシステムを変えた。
中盤の創造性のなさは明らかで、ボールを支配するシーンがあっても、バーリの守りを崩せず。8月末の移籍期限までに一流のトレクアルティスタ(トップ下)を補強しない限り、今シーズンもUEFAチャンピオンズリーグでは苦戦を強いられそうだ。
続いて、インテルのライバルであるミラン。カカー、マルディーニに加え、アンチェロッティ監督まで失い、開幕前にはトップ4入りも厳しいとの声もあった。しかし、新戦力のフンテラールが欠場したものの、レオナルド新監督のもと、アウェイでシエナを2−1と退け、白星スタートを切った。
この結果、第2節のミラノダービーに向け、メディアが本命をミラン、望み薄なのがインテルと報じるのはモウリーニョ監督も覚悟しているはず。ただし、ミランが破ったのは主力4人を放出し、降格候補の筆頭シエナだというのを忘れてはいけない。
シエナ戦の勝利で分かったのは、コンディションに問題さえなければ、センターバックのコンビ、ネスタとチアゴ・シルバには期待していいということ。そして、ゴールを決めたのはいずれもパトだったが、ロナウジーニョがマン・オブ・ザ・マッチのプレーを見せたこと。2アシストに加え、自らも鮮やかなFKでゴールしたかに思われるシーンも作った。とはいえ、繰り返しになるが、相手はシエナ。ロニーがインテル相手にも同じようなプレーができるかは、週末のゲームを見届けたい。
ユヴェントスもインテルの躓きに乗じ、ホームでキエーヴォに1−0と辛勝。新戦力のジエゴはフリーキックでイアクインタの決勝点をお膳立て、早速勝利に貢献した。ジエゴのプレーがチームの浮沈を左右しそうなのは確かだが、後半、中盤がいまひとつ機能しなかったのはシソコ(ケガ)とフェリペ・メロ(出場停止)の不在が原因だ。ポウルセンとチアゴでは、やはり心もとない。
一方でキーパーのブッフォンがセーブらしいセーブをほとんどせずに済んだのは、古巣に復帰したカンナヴァーロの力が大きい。熱狂的なサポーターのなかには2006年のカルチョ・スキャンダルの際、さっさと移籍したにも拘らず、今回ユヴェントスへ戻って来たイタリア代表キャプテンに対して、批判的な声もあった。しかし、ピッチの上でそういう人たちを見返したカンナヴァーロ。何度も完璧なタックルを見せ、ディフェンスラインを統率、オフサイドトラップも成功させた。たった1試合とはいえ、キックオフ前には冷ややかだったスタディオ・デッレ・アルピで、前半30分くらいからカンナヴァーロがボールを持つたびに大きな歓声が上がったのは感動的ですらあった。
また、アウェイでジェノアに2−3と競り負けたのがローマ。開幕戦の結果に関係なく、両者はチャンピオンズリーグ出場権を争うライバルとなりそうだが、ローマのケガ人の多さはやはり心配だ。もしアルベルト・アクイラーニが移籍先のリヴァプールでケガなくプレーしたりするようだと、ケガ人の多さは単に運が悪いだけでなく、チームの責任でもあるのかもしれない。
このほか昨シーズン4位のフィオレンティーナはアウェイでボローニャと1−1。さらなる進化を遂げるには、戦力補強が必要だろう。また、サンプドリアはカッサーノの活躍でカターニャを退け、昇格組のパルマとリヴォルノはそれぞれ1ポイントを挙げた。
そして、忘れてならないのが、ラツィオのロティート会長。テレビ番組でジャーナリスト相手に激高、パレルモのザンパリーニ会長の天下を脅かし、セリエAで最もクレイジーな会長の座を奪おうという勢いだった。
「スカイ・イタリア」の美人キャスター、イラリア・ダミーコも必死で会長をなだめようとしたが、あの場で彼を黙らせるのはモウリーニョ監督に「世界中があなたの敵なわけじゃない」と理解させるのと同じくらい、困難なことだった。
とにもかくにもセリエAが戻って来た。残り37節も見逃せない。